24鍵譜面の作成方法(後編)

今回は、音階通りに配置すると2オクターブに収まらない場合の対処法を中心に譜面作成のポイントを解説します。

2オクターブに収まらなかったら

24鍵譜面を作る際の最大の問題がこれです。以下に考えられる対処法とそれぞれのデメリットを、本家KMでの例を交えながら解説します。

一般に、はみ出した音とその周囲がどうなっているかによって対処法をよく検討する必要があります。 上から順番に検討してみてください。 大雑把に言うと1と2は限られた状況で使えるテクニック、3以降は汎用性が高い代わりに違和感の大きい妥協案と言えます。

1. フレーズのうち目立たない音だけがはみ出す場合、目立たない音を省略した譜面に簡易化する

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ノーツを「表の音」と「裏の音」に分類すると「裏の音」だけがはみ出すときは、「裏の音」の部分をBGMレーンに移動してみましょう。 これに限らず、「表の音」だけを演奏させるのは自然に難易度を調整するためのテクニックでもあります。 和音の一部がはみ出るときも目立たない部分を省略します。

デメリットとしては、似たようなフレーズが他の場所にも出現する場合、そちらも「裏の音」を省略して簡易化しないと一貫性がなくなる可能性があります。 これにより、どうしても全体の難易度が下がってしまうかもしれません。

本家KMでは和音を省略(実際は複音化かも)していることがよくあります。 和音ではない「裏の音」を省略している例もあるかもしれませんが、目立たないためパッとは思いつきません。

2. フレーズの中ではみ出した音だけが突出して目立っている場合、それをホイールに移動する

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逆に、フレーズの中で際立つ音がはみ出してしまっている場合は、ホイールに配置するとしっくりくることがあります。 この手法は本家KMではほぼ見たことがありません。

デメリットとしては、他のノートに比べてよっぽど目立っていないと不自然になってしまいます。 また、1と同様に似たフレーズがある場合の一貫性問題もあります。

3. 複数の音を1オクターブ上下に動かして2オクターブに収める

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上記2つよりも汎用的に使える手法です。 はみ出した音だけを動かすのではなく、それを含んだ複数の音(できればフレーズ全体)を動かすのがコツです。 どこからどこまでを移動するかは難しい問題ですが、境目の部分に注意してください。 音が詰まっているところでオクターブ移動が入ると不自然なだけでなく、演奏上も理不尽な飛躍が現れて一瞬で糞譜面と化す危険があります。 逆にオクターブ移動によって簡単になってしまうこともあります。

KMでは「Pink Rose」、「Smoky Town」、「The Least 100sec」などがわかりやすい例です。 これらの例では横に広いフレーズが丸められ(手を動かす必要がないため)簡単になるように、オクターブ移動の境目が工夫されています。*1

4. あきらめて別のパートを演奏させる

他の対処法でどうしても納得がいかなければそのパートを演奏させるのを諦めましょう。 パートの切り替えは3と同様にフレーズの切れ目などで行い、極力不自然にならないようにします。 こちらも理不尽な飛躍が現れないように注意しましょう。

フレーズを丸ごとBGMレーンに移動して何も演奏させないというのも検討に値する選択肢のひとつです。

5. フレーズの一部が半音だけはみ出す場合などに、はみ出す音をずらして無理やり2オクターブに収める

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あと半音だけ高ければ収まるのに…省略しても不自然だし、オクターブ移動もパッとしない…。 そんなときは、こっそり音階無視してしまうのも手です。 実際にプレイしてみると案外気づかないかもしれません。 上の画像のようにシをドにずらす場合は、幸いにも両方とも白鍵なので手の形の変化が小さくなります。 もっとも、音階の形が手に染みついた鍵盤奏者なら違和感を感じるでしょうが…。

デメリットはやはり実際の音と違うということで、気づくとかなり不自然に感じやすいです。 特にずらす幅が大きかったり黒鍵が白鍵に変化したりする場合は要注意です。

KMでは「Presto」、「AKUMAJO DRACULA MEDLEY」、「To the 44883」*2 など多くの譜面に見られます。

6. 曲全体を一定数のレーンだけずらす(2オクターブに収めるためだけに使うのは非推奨)

この手法は例えばハ長調の曲をニ長調で弾かせようというものです。 音自体はそのままなのでトランスポーズと呼ぶのが適切かどうかはわかりませんが、この記事ではそう呼ぶことにします。

KMでは「DEPEND ON ME」や「All the love」などごく一部の曲で用いられています。*3

この手法は人によって感じ方が大きく異なるかもしれません。 絶対音感でなおかつ鍵盤楽器に慣れている人にとっては全部の音がずれているように感じるでしょうし、その一方で相対音感の人はトランスポーズに気づきさえしないかもしれません。 作曲者の意図としても、音楽的に重要な意味があってその調を選んだのかもしれません。*4 そのためむやみにトランスポーズすることは避けるべきでしょう。

トランスポーズによって収まりが大幅に改善されると同時に、弾き心地も良くなる場合には検討しても良いかもしれません。 ただし、最低限以下のことは守ったほうが良いと思います。

余談ですが、beatorajaではR-RANDOMオプションを使うことで既存の譜面をわざとトランスポーズさせ、同じ曲を様々な調で練習することができます。*5 曲数の少ないKMにこそ欲しい機能でした。

7. 一時的に音合わせを完全に放棄し、複数の音をまとめて横方向に圧縮する

エリーゼのために」中盤のジグザグ階段(実際の音は純粋な階段)、「モンキーマジック」の半音階段(実際の音は半音じゃない)など、実際の音を完全に無視した配置が時々見られます。 これらは音階に忠実に配置すると2オクターブを大幅に逸脱し、かといって一部だけオクターブ移動させると理不尽な飛躍が発生するという理由によるものでしょう。

一般にお勧めできる手法ではありませんが、とにかく上昇・下降している感覚さえ雑にでも表現できれば十分という場合には検討しても良いかもしれません。 ただし、理不尽な難しさにならないよう配置には十分注意してください。 実際半音階段の演奏はかなり難しいです。

その他のテクニック

レイヤーノートを使う

レイヤーノート(Layered Not)とは、1つのノートを弾くだけで複数の音を鳴らすことができるBMSONの機能です。 ノートをドラッグして同じ時刻にある別のノートに重ねてやると、融合して水色のマークがついたレイヤーノートになります。 レイヤーノートを元に戻すには(編集モードで)ノートを右クリックして「レイヤーノーツを分離」を選択してください。

ロングノートを重ねたときに「!」マークが出現した場合、長さが違うなど正しいレイヤーノートになっていないので修正してください。

24鍵ではあまり使うメリットはない(それどころか和音が一つのノートにまとめられていて苦い思いをすることが多い)ですが、複数のパートで同じ音を出している(ユニゾンしている)場合にキー音を目立たせるために使うことがあります。 ちなみに、ユニゾンしている音を両方演奏させるにはオクターブの同時押しにするという選択もあり得ます。

手動で複音化する

完全に同時押しになっていないとレイヤーノート化できないので、それを複音化するには手動で1つの音声ファイルに合成する必要があります。 BmsONEのWAVエクスポート機能やbmx2wavなどを使いましょう。 差分を配布する際には追加WAV/OGGの同梱も忘れずに。

複数の音が一つのノートにまとめられている(複音化)のを単体で弾かせたい

和音がまとめられている場合はどうしようもないので、*6 和音の中で最も目立つ音(基本的に一番上の音)を基準に配置しましょう。 もしも和音とは別に各構成音単体のWAVファイルが同梱されていれば、和音を消して単音の同時押しに変更できることがあります。(音の長さや強弱の違いもあるので、自然に聴こえるか必ず確認しましょう。)

和音ではなくひとつのフレーズが1本WAVにまとめられている場合は、BMSONの「音を切るノート」を使えることがあります。(例:拙作の 🎹6 Cinderella Story [24key] など) ただし、ぶつ切りになってしまうので、プレイしてみて違和感がないかどうかを確認しましょう。

音がぶつ切りされていて各ノートの音程を把握しにくい

通しで聴いてなんとなく音を把握できるならば感覚を頼りに配置する手もありますが、自信がなければあきらめて他のパートを演奏させるのが賢明です。

いわゆる乱打譜面になるようなフレーズの場合、「表の音」だけなら辛うじて音程が把握でき、24鍵でも現実的な譜面になるという可能性もあります。(例:拙作の 🎹8 Ophelia [24key] など)

*1:ただし、100secの中盤では1か所だけ理不尽な飛躍が発生しているように見えます。

*2:この曲ではサビの最高潮に達した1音(ド)だけ逸脱しており、しかもド→シと続くので大変歯がゆい思いをします。2番のホイールによる対処法を検討しても良いと思います。

*3:また、LIGHTモード(13鍵盤)では基本的に音階無視となりますが、たまに24鍵譜面をトランスポーズさせたものが降ってくることもあります。

*4:実際の楽器では調によって演奏しやすさだけででなく音の質も変わります。また、調ごとに特有のイメージを持っている人も多いでしょう。

*5:マリオブラザーズのごとく右端から左端に飛躍したり、ミラーもかかってしまうことがありますが、それはご愛嬌ということで…

*6:和音を分解する音声処理技術が欲しい